空き家って、ほうっておくと固定資産税が6倍になるってホント?
はい、「特定空き家」に指定されると「住宅用地の特例」の適用外となり、固定資産税が6倍になってしまう可能性があります。
近年、空き家問題は日本全国で深刻化しています。特に、固定資産税の負担増や「特定空き家」に指定されるリスクは、所有者にとって見過ごせない問題です。
本記事では、空き家を適切に管理し、税負担を軽減する方法や不動産査定を活用した賢い解決策について詳しく解説します。
6倍になってしまう条件とは?空き家と固定資産税の関係
空き家を所有している場合、固定資産税は必ず支払う義務があります。
この税金は、土地と建物それぞれに課税され、建物がある場合は「住宅用地の特例」により土地の固定資産税が軽減されています。
例えば、200㎡以下の部分については課税標準が6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に抑えられる仕組みです。しかし、この特例は建物が適切に管理されていることが前提であり、空き家が放置され「特定空き家」に指定されると適用外となります。
つまり、空き家を放置すると、固定資産税が突然6倍になるリスクがあるということです。
これは、2015年(平成27年)に施行された「空き家対策特別措置法」に基づくもので、自治体が「特定空き家」と判断した場合、住宅用地の特例が適用されなくなるからです。
そのため、空き家は正しい管理や、修繕、建物の取り壊しをしない限り、6倍の固定資産税を課される恐れがあります。
出典 総務省-「税負担軽減措置関係」
「空家法の施行に伴う改正地方税法の施行について」
特定空き家の指定条件とその影響
「特定空き家」とは、管理が不十分で、以下のいずれかに該当するものを指します:
- 倒壊や崩壊の危険がある
- 衛生上の問題を引き起こしている
- 景観を著しく損ねている
- 周辺環境に悪影響を与えている
特定空き家に指定されると、固定資産税が増加するだけでなく、自治体から修繕や解体の指導を受けることがあります。それでも改善が見られない場合、最終的には行政代執行による強制解体も行われます。その費用は所有者に請求されるため、大きな金銭的負担を負うことになります。
まとめると、特定空き家に指定された場合、大きく以下のような影響が考えられます。
- 住民や近隣への影響が大きい場合の行政代執行
- 固定資産税の特例除外
出典 「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
空き家対策特別措置法とは
空き家対策特別措置法は、全国で増加する空き家の問題に対応するための法律です。
この法律により、自治体は特定空き家の所有者に対し、必要な措置を命じる権限を持ちます。
法律の施行により、空き家問題は放置できない状況となりました。特定空き家の指定を避けるためには、早急に管理や活用の方法を検討する必要があります。
特定空き家に指定されないために
特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置が外され、大幅な税負担増につながります。
これを回避するためには、空き家を適切に管理することが重要です。
まず、建物の老朽化を防ぐための定期的な点検や清掃を行いましょう。
また、周辺環境への悪影響を避けるため、雑草の処理や外観の美観を保つ努力も必要です。
さらに、状況に応じて解体や活用を検討することもよりよい選択肢になり得ます。
管理不全を防ぐことで、税負担の増加を避けるだけでなく、資産価値を維持することにも繋がります。
特定空き家の所有者への通知と指導
特定空き家に指定されると、所有者にはどのようなかたちで知らされるのでしょうか?
特定空き家に指定されると、自治体は所有者に通知を行い、改善のための指導を行います。
この通知には、建物の修繕、解体、または適切な管理を求める具体的な指示が含まれています。
通知を受けた所有者は、一定期間内に対応を行う必要がありますが、対応が不十分な場合、さらなる行政措置が講じられることがあります。
最悪の場合、行政代執行による解体が行われ、その費用は所有者に請求されます。
通知が来る前に、空き家の状態を適切に管理し、特定空き家に指定されるリスクを回避することが重要です。
特に、空き家が周辺環境や安全性に影響を及ぼさないよう、早めの点検や修繕を行うことで、通知を防ぐことができます。
自治体からの通知は最終的な警告であるため、無視せず迅速な対応を心がけましょう。
国土交通省「空き家管理チェックリスト」(PDF)
出典ー国土交通省「空き家の管理のやり方」
「空き家等対策の推進に関する特別措置法」
固定資産税を減免するための選択肢(管理、解体、活用、売却)
空き家に対する固定資産税は、特定空家等への指定を回避し、適切な対策を行うことで軽減可能です。
税負担を抑えるための具体的な方法について、分かりやすくご紹介します。
①空き家を正しく管理する
定期的な清掃と点検や庭の手入れ、防犯対策、近隣住民へのコミュニケーション(状況の説明やトラブル時の連絡先共有)などの対策を行うことで特定空き家に指定されることがないよう管理することで住宅用地特例が適用され固定資産税を抑える事ができます。
②解体して更地にする
古い家を解体し、更地にすることで「特定空き家」指定を回避できます。しかし、更地にすると住宅用地特例が適用されず、土地の固定資産税が増加する点に注意が必要です。費用対効果をきちんと計算し、解体の判断をするのが賢明です。
③空き家の活用またはリフォーム
空き家を賃貸住宅やシェアハウスとして活用することで収益を得られる場合があります。リフォームにはコストがかかりますが、適切に運用すれば資産価値を維持できます。
④売却して固定資産税を免除する
不動産査定を通じて売却価格を確認し、売却することで固定資産税の支払い義務から解放されます。売却時には、空き家の状態や立地が価格に影響します。また、相続の手続きが完了していない物件に関しては司法書士などと連携している業者に査定を依頼するで一括で手続きを進めることが可能です。
不動産査定で空き家を賢く活用する方法
空き家を放置せずに活用する最初のステップは、不動産査定を受けることです。査定は基本的に無料で行え、売却価格や資産価値を把握できます。
また、専門家に相談することで、以下のようなアドバイスが受けられます:
- 空き家の売却額
- 空き家を売却する際の最適なタイミング
- リフォームや解体の費用対効果
- 空き家を賃貸にする場合の市場動向
査定後は、具体的な活用計画を立て、空き家を資産として再生させることが可能です。
相続時の空き家トラブルと解決法
空き家の多くは相続をきっかけに発生します。しかし、相続において空き家がトラブルの種になるケースは少なくありません。たとえば、複数の相続人がいる場合、以下のような問題が発生することがあります:
- 管理責任の分散
相続人全員が共有者となると、空き家の管理や維持の負担が曖昧になります。結果として、建物が放置され「特定空き家」として指定されるリスクが高まります。 - 売却や活用の意見対立
一部の相続人が売却を希望し、他の相続人が維持を望む場合、意見の対立で空き家の扱いが進まないことがあります。 - 固定資産税の負担
共有の場合でも、固定資産税の支払いは発生します。誰が支払うかのルールを明確にしておかなければ、支払いが滞り、利息やペナルティが発生する恐れがあります。
固定資産税についても、納税期限までに支払わなかった場合、延滞金が発生してしまいます。延滞金は請求金額と超過期間で決定し、1ヵ月以内で2.4%、1ヵ月超で8.7%(令和4年1月1日~令和6年12月31日まで)上がってしまいます。
支払いを延滞し続けると、督促・催告や延納金の発生、財産の差し押さえなどが行われます。
(固定資産税に関する正確な情報は、各自治体の税務課や総務省のウェブサイトで確認することをお勧めします。)
解決法:
- 共有者間の話し合い:空き家をどう活用するか、明確な計画を立てましょう。不動産会社や専門家を交えて客観的な意見を取り入れることも有効です。
- 相続登記の早期手続き:相続登記を早めに行い、空き家の管理責任者を明確にすることが重要です。
- 不動産査定の活用:査定を行い、空き家の資産価値を把握することで、相続人全員が納得する選択肢を見つけやすくなります。
相続登記については、相続したことを知った日から3年以内に登記する義務があります。正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性がありますので、忘れないうちに相続登記を行いましょう。
出典 国税庁「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)」
具体的な不動産査定事例
不動産査定は、空き家を売却する際や資産として活用するために重要なステップです。以下は、実際に行われた査定の事例です。
事例1:築30年の古家を売却
- 所在地:地方都市の郊外
- 土地面積:200㎡
- 建物状況:老朽化が進み、リフォームが必要
査定結果: - 土地のみの評価額:1000万円
- 建物解体後の売却予想価格:1200万円
アドバイス:解体費用は150万円と見積もられたため、売却時には最終的に解体後のほうがメリットが大きいとの結論に。
事例2:都市部の空き家を賃貸として活用
- 所在地:大都市の中心部
- 土地面積:100㎡
- 建物状況:築20年、軽いリフォームで使用可能
査定結果: - 賃貸物件としての年間収益予測:120万円
- 売却価格:2500万円
アドバイス:所有者は収益性を重視し、賃貸物件としてリフォームを行うことを選択。
国土交通省「土地総合情報システム」
https://www.land.mlit.go.jp/
成功事例:空き家を活用したケーススタディ
空き家を有効に活用し、税負担を軽減した成功例もあります。
空き家活用事例 1:地域のフリースクールとして再生(滋賀県彦根市)
滋賀県彦根市では、放置されていた空き家を改修し、地域の子どもたちを支援するフリースクール「てだのふあ」として再活用しました。この施設では、不登校や家庭の事情で居場所を失った子どもたちが学び、成長できる場を提供しています。施設の改修には国や自治体の補助金を活用し、地域住民もDIY作業で参加しました。地域の課題を解決しつつ、保護者や地域住民との交流も深める拠点となっています。
空き家活用事例 2:子どもの学び舎と体験施設(滋賀県東近江市)
滋賀県東近江市では、築100年超の古民家を子どもの体験学習施設「学び舎 木火土金水」として改修しました。地域の親子を対象にしたイベントや学習プログラムを開催し、子どもたちに自然体験や地域文化を学ぶ機会を提供しています。改修費用は民間資金と補助金を組み合わせて実施。地域課題である歴史的景観保全にも寄与し、多くの親子が訪れる地域活性化の拠点となっています。
空き家活用事例 3:地域食堂と社会支援拠点(滋賀県守山市)
滋賀県守山市では、閉鎖された空き家を地域の食堂兼社会支援施設「Café Ink MORIYAMA」として再活用しました。この施設では、地元食材を使ったカフェ営業や、子ども食堂、お弁当の製造販売を行っています。また、就労や市民活動の相談スペースを設け、地域住民の交流拠点としての役割を果たしています。改修費用は自治体の補助金を活用し、持続可能な地域支援のモデルケースとして注目されています。
出典:国土交通省「近畿管内における空き家活用事例」
固定資産税の今後の動向と法改正の予測
空き家問題の深刻化を受けて、固定資産税に関する法改正の動きが今後も進むと予想されています。例えば、特定空き家に対するペナルティ強化や、適切に管理された空き家に対する優遇措置などが検討される可能性があります。
また、少子高齢化の影響で地方の空き家が増え続けることから、自治体ごとにより柔軟な対応が求められています。たとえば、特定空き家の指定基準が見直される可能性や、解体補助金の充実といった施策が議論されています。これらの動向を把握することが、所有者としてのリスク回避に役立ちます。
総務省「固定資産税の見直しに関する検討会資料」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000604682.pdf
不動産査定サービスを選ぶ際のポイント
不動産査定は、空き家の最適な活用方法を見つける重要な手段です。ただし、査定を依頼する際には以下のポイントをチェックしましょう:
- 無料査定が可能か
初めて査定を依頼する場合、無料査定サービスを提供している会社を選ぶと安心です。 - 実績が豊富か
空き家や古い家の査定経験が豊富な会社を選びましょう。過去の取引事例や口コミを確認することをおすすめします。 - 地域の市場に詳しいか
地域密着型の不動産会社は、空き家の立地条件や市場動向に精通しています。そのため、正確な査定結果が得られる可能性が高まります。 - 相続手続き等、まとめて対応してもらえるか
必要に応じて相続や解体、不用品処理などワンストップで対応してもらえる会社に依頼すると負担が少なく、場合によっては安く対応してもらえます。 - 所有者の意思を尊重してくれるか
後悔しないために所有者の意思を尊重してくれる会社であることも大事です。まだ悩んでいる段階であることを伝え、やり取りの中で安心できるところに依頼すると良いでしょう。
これらを基準に不動産査定会社を選び、査定を依頼することで、空き家をどういった形で活用するべきか、判断をするための情報を得ることができます。
まとめ
空き家の固定資産税は、特定空き家に指定されると最大6倍に増加するリスクがあります。
しかし、適切な管理や活用を行えば、税負担を軽減しつつ資産価値を維持できます。
さまざまな活用事例もありますし、解体やリフォーム、売却などの方法を検討し、不動産査定を活用することで最適な解決策が見つかります。
ひとりで悩んでしまって空き家を放置してしまわず、ぜひ専門家や自治体のサポートを活用しましょう。
空き家を有効に活用することで、資産を守りまた活用でき、地域活性化にも貢献することにもつながります。